金利が上がるとタワーマンションの価格は下がるのでしょうか。借入で購入を考える人にとって、気になる問題です。ただ、価格が下がるのを待てば有利に買えるとは限りません。購入価格が変わらなくても、借入条件によって毎月の収支は大きく変わるからです。
金利の影響を考える際は、まず自分の返済負担を計算し、次に家賃でどこまで賄えるか、最後に将来の買い手の予算へどう響くかを確認すると整理できます。公表資料と具体的な試算で、この三つのつながりを見ていきます。
利上げがあった2025年も、マンション価格指数は上昇した
日本銀行は2025年1月に短期の政策金利の誘導目標を0.5%程度へ、同年12月には0.75%程度へ引き上げました。ここでいう金利は金融機関同士の翌日物取引の目標で、個人が借りる投資用ローンの適用金利とは異なります。日銀の2025年1月の決定、2025年度の金融市場調節
その一方で、国土交通省の全国マンション価格指数は、2024年12月の207.7から2025年12月の225.1へ、約8.4%上昇しました。いずれも2026年3月31日公表資料の「マンション(区分所有)」の季節調整値で、2010年平均を100とする指数です。タワーマンションだけの集計ではありません。国交省・不動産価格指数、1ページ
この結果から分かるのは、政策金利の引上げとマンション価格の上昇が同じ年に起こり得るということです。「金利は価格に影響しない」とまではいえません。利上げがなければ、価格がもっと上がっていた可能性も残ります。
日銀も2025年4月時点の分析で、不動産価格を押し上げる要因として、物件需要に加えて資材価格や人手不足などを挙げています。金利だけを見て価格の方向を決めると、こうした別の力を見落とします。ただし、建築費が高いことが、購入した中古住戸の売却価格を保証するわけではありません。日銀・金融システムレポート「資産価格の動向」
なお、2026年10月5日時点では、国交省は算出プログラムの不具合に伴い2026年1〜6月分の指数の公表を延期しています。上記は2025年の実績であり、2026年の足元の値動きを示す数字ではありません。国交省の公表延期のお知らせ
自分の返済額は、政策金利より契約条件で確かめる
返済への影響を調べる出発点は、賃貸目的に利用できる融資の提示条件です。適用金利に加え、金利の見直し日、毎月の返済額を変える時期、固定期間が終わった後の扱いを確認します。
例えば、オリックス銀行が2026年1月に公表した自社の投資用ローンの説明では、金利は半年ごとに見直す一方、返済額は5回目ごとの10月1日に見直し、翌年1月から反映します。増額時は従来の返済額の1.25倍が上限です。しかし、支払いが据え置かれても利息の割合は増え、元金の減り方は遅くなります。利息が返済額を超えた場合の繰延分も、最終的には返済が必要です。オリックス銀行の説明、第7節
この仕組みを投資用ローンに一律に当てはめることはできません。SMBC信託銀行の商品説明には、1年ごとに金利を見直す変動型や、3・5・7・10年型の固定金利商品があります。「固定」という名称でも、借入期間の最後まで同じ金利とは限らないのです。これらは契約の違いを示す例で、検討中のタワーマンションに融資が出るかは、対象物件などの商品条件を別途確認する必要があります。変動型の商品説明、固定型の商品説明
借入8,000万円では、金利1ポイントの差が月約4.3万円になる
ここからは、金利による違いを比べるための仮定計算です。実在する物件の収支や、銀行の融資条件を示したものではありません。
借入額を8,000万円、期間を35年、元利均等返済、ボーナス返済なしとします。家賃収入は月40万円、管理費・修繕積立金・賃貸管理費・固定資産税等・保険を合わせた費用は月8万円と仮定します。税や保険の年払い分は月割りです。
| 仮定する年利 | 毎月のローン返済 | 家賃から費用と返済を引いた月の現金収支 |
|---|---|---|
| 2.0% | 約265,010円 | 約54,990円 |
| 3.0% | 約307,880円 | 約12,120円 |
| 4.0% | 約354,220円 | 約−34,220円 |
各金利が35年間変わらない別々の条件で計算しています。すでに借りている変動金利ローンの翌月の返済額を予測した表ではありません。また、購入・売却の諸費用、臨時の修繕、所得税等は含めていません。元金返済も差し引いた現金収支なので、会計上の利益とは異なります。
年2%と3%では、返済額に月約4.3万円の差が出ます。同じ家賃を受け取っていても、費用と返済を引いた残りは約5.5万円から約1.2万円へ縮みます。年4%では、満室でも毎月約3.4万円の持ち出しです。
さらに、年3%で年間2か月の空室が生じたらどうでしょうか。家賃は10か月分、費用と返済は12か月分支払うとすると、年間収支は約65.5万円の赤字になります。満室が続く場合の約14.5万円の黒字から、大きく変わります。ここでは空室中も費用を月8万円としており、募集や原状回復の追加費用は入れていません。
購入前には、提示金利での収支だけでなく、金利が高い条件と空室が重なる条件も計算しておくと、必要な手元資金を考えやすくなります。現在の返済を払えることと、条件が変わっても保有を続けられることは、それぞれ確かめる必要があります。
家賃相場の上昇を、そのまま自分の増収に置き換えない
返済が増えても、家賃を上げられれば補えると考えるかもしれません。実際、東京カンテイの2025年年間集計では、東京23区の分譲マンション賃料は前年比10.0%上昇しました。一方、大阪市は1.3%で、地域によって動きは違います。東京カンテイ・2025年年間版、2ページ
ここでいう賃料は、募集事例に基づく数字です。同社の集計は30㎡未満の住戸などを除いた月額募集賃料を用いており、同じ住戸の家賃が毎年どれだけ上がったかを追ったものではありません。新築や高額住戸が多く募集されれば、集計値にも影響します。既存の入居者から受け取る家賃が、統計と同じ割合で増えるという意味ではないのです。同系列の集計方法
候補住戸の収支には、現在の賃貸借契約や、同じ棟で面積・階・方角が近い住戸の募集条件を使います。募集賃料と成約条件も区別し、想定より低い家賃になった場合を比較します。相場上昇を前提にしない収支を先に置けば、金利負担を家賃増額に頼りすぎていないかが見えてきます。
売却時には、買い手の借入予算と周辺供給を見る
金利は、自分が保有している間の収支だけでなく、将来の買い手の予算にも関係します。
毎月の返済予算を28万円、返済期間を35年に固定すると、計算上の借入元本は年2%で約8,453万円、年3%で約7,276万円です。差は約1,177万円。手元資金が同じ買い手なら、金利が高い条件では購入に使える予算が小さくなります。これは価格を押し下げる要因になり得ますが、この差額だけ物件価格が下がるという予測でも、銀行の審査限度額でもありません。
同時に確認したいのが、競合する住戸の供給です。不動産経済研究所の2026年3月末時点の調査では、20階建て以上のマンションの首都圏の完成予定戸数は、2026年が12,439戸、2027年が6,270戸でした。供給の時期には偏りがあります。ただし、完成予定戸数は売れ残り戸数でも、そのまま賃貸に出る戸数でもなく、計画変更もあり得ます。超高層マンション動向2026、6ページ
この数字だけで首都圏全体の過剰供給を判断することはできません。検討する際は、候補物件の近くで、似た広さや価格帯の住戸がいつ完成するのかまで絞ります。同じ棟の売出住戸、競合する賃貸募集、近隣の完成計画を並べれば、売却や賃貸の相手がどの住戸と比較するかを考えられます。
金利のニュースを読んだら、まず銀行の提示条件で返済予定を作り、管理資料と賃貸条件を入れて収支を計算する。そのうえで、空室や費用増が重なっても保有を続けられるかを確かめます。値上がりを見込む場合にも、売却までの毎月の支払いを賄える計画があることが、購入判断の土台になります。