マンション購入

外国人が日本のマンションを買うときの留意点――2026年の登記・外為法・税務ルール

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日本のマンション購入に向け、書類と鍵を前に手続きを確認するイメージ
生成したイメージ画像です。実在の物件・人物・書類を示すものではありません。

結論からいうと、2026年10月21日現在、外国籍であることだけを理由に日本のマンションを買えないという全国一律の制度はありません。政府答弁でも、外国人は国籍にかかわらず原則として日本国内の不動産を所有できるとされています。政府答弁(2025年6月20日)

ただし、「外国人」という一語で手続は決まりません。所有できるかは国籍、外為法の報告は居住者・非居住者の区分、税務は日本の所得税法上の居住区分と売主の属性、融資は金融機関の審査で決まります。また、不動産の所有は在留資格ではありません。日本で暮らすには、就労・留学・家族関係など活動や身分に対応する在留資格を別に満たす必要があります。出入国在留管理庁の在留資格一覧

最初に、国籍・居住地・利用目的を分けて考える

購入前に分けて確認する項目
確認すること 主に何で決まるか 実務上の意味
所有できるか 国籍と物件の場所・用途 外国籍でも原則可能。特別注視区域などは別途確認
外為法の報告 外為法上の居住者・非居住者 非居住者なら取得後20日以内の報告を検討
住宅ローン 商品要件、在留資格、国内所得・信用 所有の可否とは別。契約前に事前審査
買主の源泉徴収 売主が税法上の非居住者等か 買主自身の国籍ではなく売主側が起点
購入後の申告・管理 居住地、賃貸・売却の有無 納税管理人や国内連絡先が必要になる場合

特に注意したいのは、「外国籍」と「非居住者」は同義ではないことです。日本に生活の本拠がある外国籍の人は外為法上の居住者になり得ます。一方、日本人でも海外に生活の本拠を移せば非居住者になり得ます。外為法と所得税法では定義や判定時点も同じとは限らないため、入国直後、海外転出直後、二拠点生活では、決済前に司法書士・税理士・取引銀行へ判定を確認します。

住宅ローンを使うなら、物件探しより先に候補金融機関へ相談した方が安全です。例えば【フラット35】は、外国籍の申込人に永住者または特別永住者の資格を求めています。民間ローンの要件は金融機関ごとに異なり、非永住者向けの商品があっても、自己資金、国内収入、在留期間、連帯保証などの条件は一律ではありません。【フラット35】の利用条件

契約前に、資金経路・名義・登記書類を固める

海外から購入資金を送る場合は、送金元口座の名義、売買契約の買主、登記名義、ローン債務者を早い段階で一致させます。銀行や宅地建物取引業者は本人確認、取引目的、職業、法人の実質的支配者、資金の出所を確認することがあります。高額送金の限度額、着金日、円転の方法、組戻し時の扱いも、手付金を払う前に確認します。購入後に名義を配偶者や会社へ変えると、単なる訂正ではなく贈与・譲渡や再登記になる可能性があります。国土交通省の不動産業におけるマネロン対策

日本に住所がない外国人が新たに所有者として登記する場合、2024年4月1日以降は、原則として本国・居住国政府の住所証明書、または公証人が認証した宣誓供述書と旅券の写しを用意し、外国語書類には日本語訳を付けます。国や書類によって認証・有効期限の扱いが違うため、決済直前ではなく司法書士に原本を事前確認してもらいます。法務省の海外住所証明の取扱い

同じく2024年4月1日以降、海外居住者が所有者になる登記では国内連絡先の氏名・住所等を申請します。連絡先は自然人でも法人でもよく、不動産会社や司法書士も想定されています。当面は「国内連絡先なし」とする余地もありますが、管理組合、自治体、税務署からの連絡を受ける体制は別に必要です。外国人の氏名はローマ字も併記します。法務省の所有権登記案内

2026年10月5日からは、所有権の保存・移転登記などに伴う検索用情報の申出に国籍等も必要になりました。国籍情報は検索用情報管理ファイルに記録される内部情報で、登記事項証明書に国籍が一般公開される仕組みではありません。法務省「検索用情報の申出について」

非居住者は、2026年4月から自宅購入も外為法報告の対象

2026年4月1日以降、外為法上の非居住者が日本の不動産を取得したときは、原則として取得後20日以内に、日本銀行を経由して財務大臣へ「本邦にある不動産又はこれに関する権利の取得に関する報告書」を提出します。金額や面積の下限はなく、売買だけでなく贈与・相続などによる取得も対象です。居住者である代理人が提出でき、オンライン提出も可能ですが、報告書は日本語で作成します。財務省の制度概要

この点は2026年の大きな変更です。2026年3月31日までは本人や親族の居住用など一定の取得が報告対象外でしたが、4月1日以降は、マンションそのものの取得は自宅目的でも報告します。居住用の借地権など「不動産に関する権利」には一部の例外が残るため、借地権付きマンションは建物と権利を分けて確認します。財務省の不動産取得報告FAQ

これは取得を許可してもらう事前審査ではなく、取得後の報告です。外国籍でも外為法上の居住者なら、国籍だけを理由にこの報告が必要になるわけではありません。反対に、日本国籍でも非居住者なら対象になり得ます。売買契約書に「仲介会社が対応する」と書かれていない限り自動では提出されないため、誰が、いつ、どの不動産番号で出すかを決済前に決めます。

税金は国籍より居住区分――売主が非居住者なら買主にも義務

購入時には印紙税、登録免許税、不動産取得税などがかかり、所有中は固定資産税・都市計画税、管理費、修繕積立金などを負担します。新築や課税事業者から買う建物部分には消費税が含まれることがあります。外国籍だけを理由に一律の取得付加税が課される制度ではありませんが、居住用家屋の登録免許税軽減や住宅ローン控除などは、実際の居住、床面積、所得、入居時期等の要件を個別に満たす必要があります。国税庁「マイホームを持ったとき」

見落としやすいのが売主側の居住区分です。日本のマンションを非居住者または外国法人から買い、代金を支払う場合、買主は原則として代金の10.21%を源泉徴収し、税務署へ納付します。個人が自己または親族の居住用に買い、代金が1億円以下である場合だけ例外です。買主が外国人か日本人かではなく、売主が非居住者等かどうかで生じる義務です。契約後に気づくと決済金額が合わなくなるため、仲介会社と税理士に売主の居住区分を確認します。国税庁「非居住者等から土地等を購入したとき」

購入後に第三者へ貸す場合、日本の賃料収入は国内源泉所得になります。非居住者オーナーへの賃料は原則20.42%の源泉徴収対象で、個人の借主が自己または親族の居住用に借りる場合は例外です。日本で確定申告が必要になるときは、国内の納税管理人を定めます。将来売るときも日本の譲渡所得課税と、買主側の10.21%源泉徴収を織り込む必要があります。国税庁の非居住者に対する源泉税率、国税庁の納税管理人案内

マンションでは、専有部分だけでなく管理組合も引き継ぐ

マンションの購入は、住戸だけでなく共用部分と敷地の持分を取得し、区分所有者として管理組合に加わることを意味します。契約前に、管理規約、使用細則、直近の総会議事録、長期修繕計画、修繕積立金残高、滞納、借入れ、値上げや大規模修繕の予定を確認します。短期賃貸、事務所利用、ペット、改装、駐車場のルールは物件ごとに違い、所有できることと希望用途に使えることは別です。海外居住者は議決権行使の方法と通知先も管理会社へ届けます。国土交通省「外国人所有不動産の管理」

2026年4月1日には改正区分所有法が施行され、所在等不明の区分所有者を決議の母数から除外する裁判手続、総会の定足数・多数決要件の見直し、建物と敷地の一括売却や取壊しなど新しい再生手法が入りました。欠席していれば決議の影響を受けない、という意味ではありません。特に築年数の古いマンションでは、規約が改正法へ対応済みか、建替え・更新・売却の検討が始まっていないかを議事録で確認します。法務省の改正マンション関係法案内

防衛関係施設などの周囲や国境離島には、重要土地等調査法の注視区域・特別注視区域があります。特別注視区域で、マンション専有部分または敷地権相当の土地が200㎡以上なら、売主と買主の双方が契約前に届け出ます。一般的な住戸は面積要件に達しないことが多いものの、ペントハウスや大きな敷地持分では、内閣府のウェブ地図と登記面積で確認します。この制度は国籍を問わず適用されます。内閣府「届出について」

2024〜2026年に変わったこと、まだ変わっていないこと

2026年10月21日時点の制度変更
時期 変更 購入者への影響
2024年4月1日 海外居住所有者の国内連絡先、外国人氏名のローマ字併記 登記書類と連絡先を決済前に準備
2025年4月21日 所有権登記時に検索用情報の申出を開始 氏名・住所・生年月日・メールアドレス等を申出
2025年11月以降 新築分譲の投機的短期転売を抑える業界自主策 一部事業者が購入戸数、名義、引渡し前の売却活動を制限
2026年4月1日 非居住者の不動産取得報告を居住目的にも拡大 自宅購入でも原則20日以内に外為法報告
2026年4月1日 住所・氏名変更登記の義務化 変更から2年以内。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の可能性
2026年4月1日 改正区分所有法の施行 総会運営とマンション再生の決議ルールが変化
2026年10月5日 検索用情報に国籍等を追加 新たな所有権登記等で申出。国籍は一般公開しない

2026年4月から、所有者は住所や氏名の変更日から2年以内に変更登記をする義務があります。2026年4月1日より前の変更で未登記のものも対象です。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料が科される可能性があります。海外へ転居したときは、税務・管理会社への届出だけで終わらせず、国内連絡先と住所変更登記も司法書士へ確認します。法務省「住所等変更登記の義務化」

新築分譲では、2025年11月から不動産協会の会員各社が、登録・購入戸数の上限、申込から登記までの名義統一、引渡し前の売却活動禁止を基軸とする自主策を順次導入しています。これは外国人だけを対象とする法律ではなく、日本人を含む投機的短期転売への業界対応です。対象物件、開始時期、上限戸数は各社が決めるため、販売要項と契約特約を確認します。不動産協会の取組方針

一方、外国人の土地・建物取得について許可制や審査付き事前届出などの新しい法的ルールを設けるかは、2026年度中の骨格取りまとめに向けて政府の検討会で議論中です。2026年10月21日時点で、通常のマンション購入を外国籍だけで全国一律に禁止・許可制とする新制度が施行されたわけではありません。成立済みの外為法報告や登記の国籍申出と、検討中の取得規制を混同しないことが重要です。内閣官房の検討会資料

購入から所有までの実務チェックリスト

①買主を決める:個人・法人、共有持分、契約名義、送金名義、登記名義をそろえる。後からの名義変更は前提にしない。

②居住区分を確認する:外為法と所得税法について、取得日・決済日現在の居住者/非居住者判定を専門家へ確認する。

③資金を先に固める:ローンの事前審査、自己資金、海外送金の限度額、着金日、為替、資金源資料を準備する。

④物件と管理を調べる:登記、重要事項説明、管理規約、総会議事録、長期修繕計画、修繕積立金、滞納、利用制限、ハザード、重要土地等調査法の区域を確認する。

⑤売主を確認する:売主が非居住者等なら、10.21%源泉徴収の要否と決済方法を契約前に決める。

⑥登記書類を先に見せる:住所証明、宣誓供述書、旅券、訳文、署名証明、国内連絡先、ローマ字氏名、国籍等の検索用情報を司法書士に事前確認してもらう。

⑦決済後の期限を管理する:非居住者は外為法報告の20日、住所・氏名変更は2年、税の申告・納付期限をカレンダー化する。

⑧不在時の運営を決める:管理費等の支払口座、管理組合の通知・議決権、郵便、納税管理人、賃貸管理、緊急連絡、保険、鍵の管理を日本国内で継続できるようにする。

実務では、国籍よりも「どこに住み、誰の名義で、何に使い、誰から買うか」が結果を左右します。売買仲介会社だけに全分野を任せず、登記は司法書士、税務は国際税務に詳しい税理士、在留資格は行政書士・弁護士、ローンと送金は金融機関へ、それぞれ決済前に確認してください。本記事は一般的な制度の整理であり、個別案件の法務・税務助言ではありません。